Hedgehogs
「Hedgehogs はりねずみたち」
2021 東京
壁、アクリル樹脂、ベル、スイッチ、玄関照明、扉
写真:加藤健
「Hedgehogs」
2021 Tokyo
Wall, Acrylic resin, Bell, switch, entrance lighting, Door
photo: Ken KATO
「Hedgehogs」 中島伽耶子
「ハリネズミたち」 Kayako Nakashima
物事を隔てる壁や境界線をモチーフにしながら、場所との関わりを出発点に作品を制作してきました。今回の展示では人との関係性における希求と暴力性をテーマに空間を構成しています。誰かを呼ぶためのベル、明かりがチラつく扉、侵入してくる光など、鑑賞者の意図に関わらず、何かしらのサインが巨大な壁の反対側へ送られます。私たちのコミュニケーションが容易ではないように、送られたサインに対する反応は見えず、時には無視され、受け手の環境によって思わぬ暴力性を持ちます。展示室を分断する巨大な壁は、外敵から身を守る防護壁なのか、何かを閉じ込める監獄としての壁なのか判然としません。時代とともに価値観が開かれることで、私たちはより多様な考え方を知り、理解し合うチャンスを得ると共に、より無自覚に他者を傷つける場面が増えた気がします。自分と他者とを隔てる壁を破壊しようとするのではなく、想像力を使いながら壁越しにどのような対話ができるのか、私は興味があります。
「Hedgehogs (ハリネズミたち)」というタイトルは、壁に刺さるアクリルの板がハリネズミの針に似ていることと、寓話から生まれた「ハリネズミのジレンマ」という言葉からとりました。寒い冬に、お互いに寄り添い暖め合いたいと近づくのですが、お互いの針のような毛が刺さってしまうため、離れたり近づいたりを繰り返すこのお話は、他者との適切な距離を探る心理的な葛藤を表す言葉として使われます。本来はハリネズミではなくヤマアラシという別の動物で表現されていたのが、針のような毛を持つ外見が似ていることから、どちらの動物でも同じ意味として使われているようです。短絡的に同じカテゴリーにまとめられ、ハリネズミは悲しんだかもしれないと想像しています。