《We are talking through the yellow wall》
《i don't anyone what i don't want to say》
《i don't anyone what i don't want to say》
《we are talking through the yellow wall》
2023 東京
木、壁紙、テーブル、ドアチャイム、点字シール、アクリル樹脂、トランスジェンダー ・フラッグ、本棚、手書きの文字
壁部分:高さ520cm 幅1230cm
壁紙提供:株式会社サンゲツ
点字シート製作協力:プリントス株式会社
写真:大倉英揮
《i don’t tell anyone what I don’t want to say》
2023 東京
ビデオ、ドローイング
6分37秒、27.5×22cm 2点
作家蔵
協力:岩瀬海、山本夏綺
《we are talking through the yellow wall》
2023 Tokyo
Wood, wallpaper, table, door chime, Braille sticker, acrylic resin, transgender Flag, bookshelf, handwriting
Wall section: 520 cm high, 1230 cm wide
Wallpaper provided by Sangetsu Co.
Supported by: Printos Co.
photo: Hideki Ookura
《i don’t tell anyone what I don’t want to say》
2023 Tokyo
Video, drawing
6min 37sec, 27.5cm x 22cm, 2 pieces
Collection of the artist
Supported by:Umi Iwase、Natsuki Yamamoto
カラー点字による文章
点字シート製作協力:プリントス株式会社
「私たちは黄色い壁越しに話をしている」
この壁は、誰が手を伸ばしても届かないほど高く、鮮やかな黄色い色をしています。展示室を斜めに分断するようにそびえ立ち、展示室を突き破り、こちらの広場まで突き出ています。
壁には、いろいろな意味があると思います。こちら側と向こう側をへだてる境界線。突破すべき障害物。自分の安全を守るシェルター。コミュニケーションを阻むものでもあり、逆に向こう側への興味をそそるものでもあります。あなたはこの壁から、どんなことを想像しますか?
この作品のタイトルは「私たちは黄色い壁越しに話をしている」です。黄色い壁によって、展示室は2つの空間に分かれています。壁には、玄関で使われる呼び出しボタンや覗き穴が付いています。けれど、ボタンを押しても音はならず、穴の向こう側もよく見えません。向こう側にいる人の様子を知ったり、対話するのは簡単ではないようです。
反対側の壁には、映像作品「言いたくないことは誰にも言わない」が展示されています。誰かに向けて書かれた手紙を、他の紙と貼り合わせ、黒く塗り、その上を塗りつぶし、誰にも読めないようにする作業の様子を記録しました。誰かと仲良くなるには、自分のすべてをさらけ出して、共感しあう必要はありません。自分の気持ちや経験は自分だけのものとして、壁のこちら側に留める自由もあります。
この壁の上には、トランスジェンダーの人たち(生まれた時に割り当てられた性別ではなく、自分が生きやすいと感じる性別や状態を選択する人)の存在を示す、水色、ピンク、白色が使われた旗が置かれています。2階にいる人は旗の存在に気づくかもしれませんが、ここからでは手が届かないし、見ることはできません。いま社会の中で見えないことにされたり、不利な立場に立たされているトランスジェンダーの人たちの存在を想像しています。
すべての人に、すべてのことが同じように確認できるわけではありません。だからこそ、誰かとコミュニケーションをとる時、相手と自分が違う立場にあることや、自分が知らないものがたくさんあることを受け入れて、自分から知っていく勇気が必要ではないでしょうか。人と自分との間には、壁がある。その上で、想像したり、自分を守ったりしながら、話を始められるといいなと考えています。
なかしま かやこ
イベント
展覧会「あ、共感とかじゃなくて。」の関連イベントとして
「『黄色い壁紙』の音読会」(2023,10,30)を行いました。イベントでは作品制作のモチーフとした、シャーロット・パーキンズ・ギルマンの短編ホラー小説『黄色い壁紙』を、参加者と共に声に出して読みました。ゲストに言語とコミュニケーションを研究する三木那由他さんをお迎えし、会話や痛みについて話を伺いました。
https://www.mot-art-museum.jp/events/2023/10/20231006130835/
イベントアーカイブとして、日記のような手紙のような、そして小説『黄色い壁紙』のパロディーのような文章を公開しています。
本棚リスト
・『トランスジェンダー問題 議論は正義のために』ショーン・フェイ (著), 高井 ゆと里 (翻訳), 清水 晶子 /明石書店/2022年
・『トランスジェンダー入門』周司 あきら (著), 高井 ゆと里 (著)/集英社新書/2023年
・『怖い家』ジョン・ランディス編 宮崎真紀訳/エクスナレッジ/2021年
・『新フェミニズム批評 女性・文学・理論』エレイン・ショウォールター(編)青山誠子(訳)岩波書店/1999年
・『黄色い本』高野 文子 (著)/KCデラックス/2002年
・『かもめ・ワーニャ伯父さん』チェーホフ (著), 神西 清 (翻訳)/新潮文庫/1967年
・『ホワイトフェミニズムを解体する―インターセクショナル・フェミニズムによる対抗史』カイラ・シュラー (著), 飯野 由里子 (監修), 川副 智子 (翻訳)/明石書店/2023年
・『The Yellow Wallpaper』横田和憲 (著)/松柏社/1999年
・『生殖の政治学―フェミニズムとバース・コントロール 』荻野 美穂 (著)/山川出版社/1994年
・『<責任>の生成ー中動態と当事者研究』國分功一郎 (著), 熊谷晋一郎 (著)/新曜社/2020年
・『言葉の展望台』三木那由他/講談社/2022年
・『トランスジェンダーのリアル』冊子(詳しくはhttps://tgbooklet.wordpress.com)
・『白い人・黄色い人』遠藤 周作 (著), 若林 真 (解説)/講談社文芸文庫/1996
・『例えば(天気の話をするように痛みについて話せれば)』展覧会記録冊子/岩瀬海、櫻井莉菜、中島伽耶子/2022年
・『会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション』三木那由他/光文社新書/2022年